ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【論文メモ】グレンジャー因果性のオリジナル論文Grainger (1969) : (その2)因果性,フードバック,瞬時的因果性,因果性ラグ

Grainger因果性のオリジナル論文 [Granger, C. W. (1969). Investigating causal relations by econometric models and cross-spectral methods. Econometrica: journal of the Econometric Society, 424-438]に書いてあったことのメモです.前回の続きです…

【論文メモ】グレンジャー因果性のオリジナル論文Grainger (1969) : (その1)パワースペクトルの定義

これまでの人生で,グレンジャー因果性について真剣に取り組んでこなかったので,反省して最近勉強をはじめました.ということで,Graingerのオリジナル論文 [Granger, C. W. (1969). Investigating causal relations by econometric models and cross-spect…

【Rで時系列解析】グレンジャー因果 (Granger causality)の周波数領域表現を数値実験で検証

グレンジャー因果 (Granger causality)のGewekeのアプローチを少しずつ理解していきます.前回の説明の続きで,今回は数値実験をします. chaos-kiyono.hatenablog.com 1. 問題設定 単純な例から考えはじめないと,私には理解できません.一般的な表現を見て…

【時系列解析】グレンジャー因果 (Granger causality)の周波数領域表現

グレンジャー因果 (Granger causality)の評価についてのGewekeのアプローチを理解するために,2変量時系列でその方法をまとめます.2よりも多い変量だと私には難しいので,まず,2変量で考えます.これは,自分の理解を深めるためのメモです.Gewekeの論…

【Rで時系列解析】Rでパワースペクトル推定:心拍変動解析での実際

Rで時系列のパワースペクトルを推定したいとき,もっともお気楽なのは,"spectrum"というコマンドを使うことだと思います.今回は,心拍変動 (RR間隔時系列)のスペクトル解析で"spectrum"コマンドを使った実例を紹介します.ちなみに,例として使用したRR間…

【Rで時系列解析】Rでspectrumを使ったパワースペクトル推定におけるspansの設定(数値デモ)

Rのコマンド"spectrum"のオプション"spans"の設定で,パワースペクトルの推定結果がどうなるかのデモです."spans"が何かは,前回の記事を参考にしてください. chaos-kiyono.hatenablog.com 時系列の生成については,以下の記事を参考にしてください. chao…

【Rで時系列解析】スペクトルウインドーを使ったパワースペクトルの平滑化:Rの"spectrum"での"spans"オプションの意味

今回は,離散フーリエ変換でえられるギザギザなパワースペクトルを,滑らかにする「平滑化」についてです.いろいろ書きたいことはありますが,まずは,Rでお世話になることが多い"spectrum"というコマンドのオプション"spans"について説明します.今回の説…

【確率過程の基礎】線形確率過程

線形確率過程の定義が曖昧なまま,「非線形何たら」とか感覚的な話をする論文が増えていると感じます.心拍変動指標では,パワースペクトルの両対数プロットの傾きが非線形指標に分類されて,もう30年くらいたちます (何で非線形なの?).ということで今回は…

【Rで聴覚の不思議】無限にのぼるドレミファソラシド:シェパード・トーン

前回に続き「シェパード・トーン」(Shepard tone)のサンプルを作成してみました.今回は,無限に登り続ける音階です.www.youtube.com 作り方の詳細は前回の記事を参照してください (それほど詳しくありませんが). chaos-kiyono.hatenablog.com 今回のポイ…

【Rで聴覚の不思議】無限音階「シェパード・トーン」の紹介

最近,音の認知について少しずつ勉強しています.今回は「錯聴」と呼ばれる音のイリュージョン (錯覚)の話です. 有名な錯聴の一つに「シェパード・トーン」(Shepard tone)と呼ばれる,無限に音程が上昇していくように聞こえる音があります.私も自分でその…

【Rで時系列解析】相乗対数正規過程に従う非ガウスゆらぎ

自然界で観測される時系列には正規分布に従わないものがたくさんあります.正規分布はガウス分布とも呼ばれるので,正規分布に従わない確率過程は「非ガウス過程」と呼ばれます.時系列であれば,「非ガウス時系列」ですが,私はもっとやわらかい響きが好き…

【Rで時系列解析】1/fノイズの自己共分散 (自己相関)関数は対数関数で,べきじゃない

今回は,1/fノイズ (ピンクノイズ)の自己共分散 (自己相関)関数についての話です.つまり,パワースペクトルが となる時系列の自己共分散 (自己相関)関数は, ということを説明します.解析的に導出しようかと思いましたが,この論文 doi.org の流れをなぞる…

【Rでピンクノイズ】ピンクノイズ (1/fゆらぎ)の生成方法のまとめ

これまでに,ピンクノイズ (1/fゆらぎ)のサンプル時系列の生成方法について,私が知っているものは,ほぼすべて紹介しました (自己相関関数を指定するものだけ説明してません).今回は,ピンクノイズ (1/fゆらぎ)の生成方法をまとめておきます. Rのパッケー…

ピンクノイズ (1/fノイズ)で睡眠改善?

ピンクノイズ (1/fノイズ)を聴く効果については,いろいろな説があるようです.例えば,以下のページ muysalud.com では, 眠りにつくのを助ける 深い眠りにいざなう 記憶力を改善させる 集中力を高める という効果があると説明されています.私は,ピンクノ…

【Rで時系列解析】1/fノイズ (ピンクノイズ)時系列の生成:中点変位法

今回は,中点変位法 (midpoint displacement algorithm)で,1/fノイズ (ピンクノイズ)のサンプル時系列を生成します.元々,中点変位法は,非整数ブラウン運動のサンプルパス (サンプル時系列)を作る方法ですが,非整数ブラウン運動をわずかにはみ出た領域を…

【Rで時系列解析】中点変位法 (midpoint displacement algorithm)で非整数ブラウン運動のサンプルパスを生成

1次元の非整数ブラウン運動 (fractional Brownian motion)のサンプルパス (時系列)の生成方法の一つ「中点変位法」(midpoint displacement algorithm)について説明します. 中点変位法で作成した非整数ブラウン運動のサンプルパス (H=0.8)この話は,「フラ…

【Rで時系列解析】白色ノイズのm階積分 (和分)過程のパワースペクトル (数値実験)

前に,階積分 (和分)過程のパワースペクトルの記事を書いたときに導いた結果,分散の白色ノイズの階差分過程の時系列のパワースペクトルは, 階積分 (和分)過程の時系列のパワースペクトルは, について,数値実験で確認していなかったので,やっておきます…

【時系列解析】非整数積分 (和分)があれば,パワースペクトルはもっと自由:ARFIMA(0, d, 0)の半歩手前から大きく外れてみる

今回はパワースペクトルが,を定数として, の形になる,差分方程式で記述される確率過程を考えます.前の記事 chaos-kiyono.hatenablog.com で,m階積分 (和分)過程のパワースペクトル(もどき)を計算しました.つまり, 分散の白色ノイズの階積分 (和分)…

【時系列解析】m階積分 (和分)とパワースペクトル:ARFIMA(0, d, 0)の一歩手前

今回は,Autoregressive fractionally integrated moving average process (ARFIMA)への導入の手前です.ARFIMAの日本語訳は,私が訳せば「自己回帰非整数積分移動平均過程」,インターネット検索でよく見る訳は「自己回帰実数和分移動平均過程」です.MA (m…

【時系列解析】ピリオドグラムって何?よくわかりません

最近,「ピリオドグラム」(periodogram)とか「ピリオドグラム法」って何を意味するのかわからなくなりました.きっかけは,セミナーで使っている北川源四郎先生の時系列解析の本です.人のせいにしてすいません. 私は,periodogramを,ずーっと(20年ほど…

【Rで時系列解析】パワースペクトルの平均化処理

パワースペクトルを推定する数値実験を,少しずつやっていきたいと思います. 平均化処理ってやったほうがいいかも,というのが今回の感想です. Rでパワースペクトルを推定するとき,"spectrum"というコマンドを使えばいいんでしょ,と考えている人も多いと…

【Rで時系列解析】パワースペクトルの平均処理

本日のセミナーの課題を,私なりこなしました.パワースペクトルを推定するときは,時系列をまるごと1本としてパワースペクトルを計算するよりも,時系列を部分区間に分割して,複数のパワースペクトルの平均をとった方が,パワースペクトル推定のばらつきが…

【基礎工学のための数学】線形性と特性方程式と重ね合わせ:線形微分方程式と線形差分方程式の解

時系列解析の応用的な論文で「非線形性」という用語が使われることがあります.非線形というのは,線形でないという意味です.医学・生理学,医工学分野などの応用分野では,「非線形性」が印象だけで使われていて,意味が崩壊しているような感じがします.…

【確率過程・時系列解析】2次自己回帰過程の自己共分散 (自己相関)関数

2次自己回帰過程の自己共分散 (自己相関)関数を一つの式で表しておきます.差分方程式の形での表現は,この前のセミナーで学生が導いてくれたし,インターネットで検索すればいくらでも出てくると思います. 2次自己回帰過程の自己共分散とパラメタの関係 2…

【確率過程・時系列解析】1次自己回帰過程のパワースペクトルから自己共分散(自己相関)を求める

理由は良く知りませんが,自己共分散(自己相関)関数を使ってパワースペクトルを定義する流儀が存在します.そんな流儀,知ったことではないので,ここでは,1次自己回帰過程のパワースペクトルから,自己共分散(自己相関)を求めてみます.今回は,ここま…

【基礎工学のための複素関数論】留数定理

今回は留数定理です.留数定理を知っておいてほしい理由は,自己回帰過程の分解の計算に使うからです.留数定理では,下図のように周回積分する単一閉曲線の内側に,特異点と呼ばれるトゲや穴,,が複数ある場合を扱えます. 複素平面にある特異点のイメージ…

【基礎工学のための複素関数論】複素積分で覚えておきたいポイント

複素積分について勉強したでしょうか.私は数学者ではありませんが,昔,ある大学で,線形代数とか,複素関数論とか,数学の基礎科目の講義を一通り担当していました.毎週6~7コマ担当なので,結構疲れて,肩が痛かったです.その当時は,お前の仕事は講義…

【確率過程・時系列解析】自己回帰過程のパワースペクトルと自己共分散(自己相関)の関係(複素積分表示)

今回は,自己回帰過程について,パワースペクトルの複素積分で,対応する自己共分散(自己相関)を表します.これは,「次自己回帰過程のパワースペクトルは,1次自己回帰過程と2次自己回帰過程のパワースペクトルの和になっている」あるいは,「次自己回帰…

【Windows・R】フォルダのパスを調べる

Rスクリプトでファイルを読み込みたいとき,そのファイルがあるフォルダのパスの情報が必要です.今回は,そのフォルダのパスを調べる方法の説明です. フォルダのパスをコピーするまで 手順は以下です. 1. エクスプローラで,読み込みたいファイルがあるフ…

【確率過程・時系列解析】自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係

自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係についての話です.何言っているかわからない人は,下にまとめた関連記事を先に見てみてください.ちょっと前に,パワースペクトルは,自己共分散(自己相関)のフーリエ変換だ,という話をしました.という…