自己回帰過程のパワースペクトルを求めるテクニックの説明です.自己回帰過程の係数が与えられた状況から,パワースペクトルの式を導くことはとても簡単です.でも,大切なことは理屈を感じることです.
必要な基本知識
長さNの時系列のフーリエ変換とその逆変換は,
です.で,
は虚数単位です.
は恒等式なので,に,
を代入すると,
フーリエ変換の式と見比べてみると,
となってます.つまり,の,
の部分に注目して,
の
乗を,
にかけてあるだけです.この部分は,各周波数成分の波の位相が周波数
に依存してシフトすることを表しています.
と
では,位置がほんの少しずれているので,振幅は同じで,波の位置(位相)だけずれます.
練習すると,
のフーリエ変換は,
のフーリエ変換は,
最後に,長さNの時系列のフーリエ変換を,
とすれば,パワースペクトルの推定量
は,
以上で準備は終わりです.
差分方程式の両辺をフーリエ変換してパワースペクトルを計算
ということで,上の知識を使えば差分方程式の両辺をフーリエ変換して,フーリエ変換の関係式を導けます.パワースペクトルも簡単に求められます.
例えば,のフーリエ変換が
で,
のフーリエ変換が
として,1次自己回帰過程のような差分方程式,
を考えます.この両辺をフーリエ変換すると,
両辺をパワースペクトルの形にするために,両辺の絶対値の2乗をとって,Nでわると,
のパワースペクトルの推定量は,
で,
のパワースペクトルの推定量は,
なので,
パワースペクトルの関係式
がえられます.が白色ノイズ
(分散
)のときが,1次自己回帰過程
だったので,のパワースペクトル
を上の式に代入すれば,
となります.複素数の絶対値の2乗が,であることに注意して,オイラーの公式
を使えば,今まで何度もお世話になってきた,1次自己回帰過程のパワースペクトル
になっていることが分かります.