自己回帰過程や移動平均過程を表現する際に便利な,ラグオペレータ (lag operator),あるいは,後退オペレータ (backshift operator)と呼ばれるものを紹介します.どちらも名前が違うだけで同じものです.ラグオペレータは,後退オペレータは
とすることが多いです.ここでは,
を使うことにします.
ラグオペレータ
のルール
ラグオペレータのルールは単純です.
は時系列に対して使うので,時系列を
とします.
と
がかけ算でくっつくと,時間が1だけ戻る.つまり,
(
の
乗)と
がかけ算でくっつくと,時間が
だけ戻る.つまり,
]
と
がかけ算でくっつくと,時間が
だけ進む.つまり,
]
と
がかけ算でくっつくと,時間が
だけ進む.つまり,
]
は,変数だと思って計算して構わない.例えば,
自己回帰過程を
を使って考えてみる
一般形を書くのは面倒なので,私が大好きな1次自己回帰過程を考えます.
(
は白色ノイズです)
を使うと,
です.簡単です.
これでは特にの便利さを感じないと思いますので,ここでは,
の素晴らしさを2つ紹介します.
を変数のように扱う
上の式を変形します.を文字式同様に扱うと以下のようになります.
右辺は分数になって,最初に説明したルールでは解釈不能です.しかし,マクローリン展開の式
をまねてやると (収束半径なんて気にしません),
となります.ということで,これを上の計算に使えば,
となり,解釈可能な形になります.この記事では,移動平均過程を紹介していませんでしたが,自己回帰過程は,無限次の移動平均過程であることが分かります.を使わなくても,
と,時間を戻していけば同じ結果になります.つまり,を変数のように考えて,マクローリン展開しても間違っていないようです.