ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【フラクタル解析】1次元ランダムウォークの自己アフィン性

 時系列のフラクタル解析に分類されるdetrended fluctuation analysis (DFA)とか,detrending moving average analysis (DMA)で何をやっているのかを理解するためには,無相関な時系列を積分すると,その積分時系列がどのような特性を持つようになるのかを理解することが必要です.

下の図は,+1と-1が,ともに確率1/2で出る確率過程のサンプル時系列を生成し,それを積分したものです.積分時系列を200本重ね書きしてあります.Rを使って,線が透明なグラフにしましたので,たくさん線が重なっているところほど色が濃くなっています.

ランダムウォークの200本のサンプルパス(時間ステップ100まで)
ランダムウォークの200本のサンプルパス(時間ステップ1000まで)
ランダムウォークの200本のサンプルパス(時間ステップ10000まで)

上の3つの図は,横軸の幅が,それぞれ,100,1000,10000になっています.縦軸の幅は,100,1000,10000の平方根に比例するようにとりました(具体的には,平方根の6.4倍の幅です).上の3つの図は,横幅が全然違うのに,目をぼやかして見ると全部同じようなグラフに見えませんか.1本のサンプル軌道を見ていても分かりづらいですが,たくさん重ねて描くと,軌道の広がりの様子がとても似ています.これが,ランダムウォークの自己アフィン性です.
自己アフィン性とは,縦横の倍率比が違う拡大をして,拡大の前後で形が同じになる性質です.ランダムウォークには統計的な意味で自己アフィン性があります.無相関な時系列を積分すると,自己アフィン性を持つ軌道になる.このことを理解することが,時系列のフラクタル解析の基礎を理解する出発点になります.正規分布に従う白色ノイズを積分しても,同じ特性をもつ軌道になります.今後,少しずつ説明していきます.

ランダムウォークの記事も参考にしてください.
chaos-kiyono.hatenablog.com