ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【時系列解析】ピリオドグラムって何?よくわかりません

最近,「ピリオドグラム」(periodogram)とか「ピリオドグラム法」って何を意味するのかわからなくなりました.きっかけは,セミナーで使っている北川源四郎先生の時系列解析の本です.人のせいにしてすいません.

 私は,periodogramを,ずーっと(20年ほど)「リオドグラム」とカタカナ読みしてきたので,「」じゃなくて「」だと,怒られそうです.先月くらいから,「」と書いてある本が多いと認識し,「」を使うようになりました.

 私は,論文を書くときに,periodogramって単語を使ったことないので,これからも使わないようにしようと思ってます.なぜなら,この単語は定義を一つに定めないからです.

「ピリオドグラム」というのは,パワースペクトルの推定量 (推定方法)の一つだと,私は理解しています. 私が,これまで論文を読んできた印象のからえた「ピリオドグラム」の定義は,1本の時系列\{x [n]\}_{n=0}^{N-1}をまるごとフーリエ変換してX(f)を求め,その絶対値の2乗を時系列の長さNで割ったものです.つまり,

 \displaystyle \hat{S}_N (f_k)=  \frac{\left|X(f_k) \right|^2 }{N}  = \frac{1 }{N} \left|\sum_{n=0}^{N-1} x [n] \, e^{- i 2 \pi f_k n} \right|^2   \displaystyle \left(f_k = \frac{k}{N}\right)

です.英語のWikipediaにもそう書いてあります (Nで割らないバージョンもあるとか).

en.wikipedia.org


 それが,北川先生の本では,長さNの時系列\{x [n]\}_{n=0}^{N-1}の自己共分散(自己相関)関数の推定量 \hat{C} (k)を計算し,その後に \hat{C}[k]フーリエ変換を計算するものが「ピリオドグラム」と定義してあります.つまり,
 \hat{C} (k)が, |k|の増加にともない,急速に0に近づくとき,ピリオドグラムは,

  \displaystyle \hat{S}_N (f_k)= \sum_{n=-(N-1)}^{N-1} \hat{C}(n) \, e^{- i 2 \pi f_k n} = \sum_{n=-(N-1)}^{N-1} \hat{C}( n ) \, \cos (2 \pi f_k n)   \displaystyle \left(f_k = \frac{k}{N}\right)

です.ここで,

 \displaystyle \hat{\mu} = \frac{1}{N} \sum_{n=0}^{N-1} x [ n]

 \displaystyle \hat{C} (k) = \frac{1}{N} \sum_{n=k}^{N-1} (x  [ n ] - \hat{\mu}) (x  [ n  - k ] -\hat{\mu})

です.数学のルールでは,自分で定義すれば,それで正しいのですが,これを「ピリオドグラム」と呼んだら,世界の標準とずれてしまうかもと,心配になります.

 前の記事で,時系列を分割してパワースペクトル平均化をとる話をしました.
chaos-kiyono.hatenablog.com

私の中では (英語のWikipediaの影響で),これを,バートレット法 (Bartlett's method),あるいは,ウェルチ法 (Welch's method)と呼ぶと思ってました.時系列を列を分割するときにオーバーラップがあるのが,ウェルチかな,という印象です.

 ユーチューバーが,「おい,○○」とか言って,他の人をあおったりしますが,ペリオドグラムで誰も間違いを犯したりしてません.呼び名なんて,どうでもいいということです.