グレンジャー因果 (Granger causality)の評価についてのGewekeのアプローチを理解するために,2変量時系列でその方法をまとめます.2よりも多い変量だと私には難しいので,まず,2変量で考えます.これは,自分の理解を深めるためのメモです.Gewekeの論文はこれです.
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01621459.1982.10477803
さらに,この論文も参考にしました.
https://doi.org/10.1016/j.jneumeth.2005.06.011
線形因果の周波数領域での評価
2変量の弱定常な確率過程 を考えます.
[解説] 「弱定常」というのは,アンサンブルの期待値の意味で,平均,分散,自己共分散 (自己相関)関数が,時間シフトに対して不変ということで,自己共分散 (自己相関)関数は,時間差 (ラグ)の関数で与えられます.
が無限次の移動平均過程で記述できる線形過程とします.つまり,ラグオペレータ
の多項式
を使って.
と書けると言うことです.
[解説] ラグオペレータは,のように時間を1つ戻す線形演算子です.
です.
は値を持つ変数ではありませんが,変数と同ように四則演算や指数法則が使えます.
元の論文との対応が分かるように行列を使って書けば,
です.
元の論文の流れに従い,移動平均過程から入りましたが,計算に使うのは自己回帰過程としての表現です.ということで,は自己回帰過程として
と書けるとします.ここで,,
,
,
は,
の多項式です (自己回帰過程は無限次の移動平均過程で書けます).行列で表せば,
です.
パワースペクトルを計算するのに,と
が無相関のほうが見通しがいいので,
を使って,
と変形します.
[解説] と
の相関を計算すると,
となり,無相関になってます.
式の表現を簡単にするために,上の式を
と表します.
この式を使って,のパワースペクトルを計算すると,
になると思います (行列を使ったパワースペクトルの計算はまだ説明してません).ここで,
です.
[解説] ラグオペレータをフーリエ変換すると,
になります.
ここで計算したでは,後ろの項が
の影響,つまり,
の影響を表しています.
ということで,Gewekeが導入した,が原因として
へ影響を与える線形因果の指標は
です.具体的に書こうとした分,式の変形や,タイプ結果にちょっと自信がないので,近いうちに数値実験で検証します.これは,十分に確認された結果はないので,信じないでください.間違っている部分は指摘してもらえると助かります.