これまでの人生で,グレンジャー因果性について真剣に取り組んでこなかったので,反省して最近勉強をはじめました.ということで,Graingerのオリジナル論文 [Granger, C. W. (1969). Investigating causal relations by econometric models and cross-spectral methods. Econometrica: journal of the Econometric Society, 424-438]をダウンロードして読みました.印象に残った点を自分用にメモっておきます.今回は,パワースペクトルおよびクロススペクトルの定義の部分だけです.
パワースペクトルの定義
論文の最初に2通りの方法でパワースペクトルおよびクロススペクトルの定義が与えられています.
一つ目が,パワースペクトルのクラマー表現 (Cramer representation, Cramer’s spectral representation)です.私は,Cramer representationってはじめて知りました.論文に登場する式は,ぱっと見で分かりづらいので,知っている形と対比しておきます.
【論文中の式】
が平均0の定常過程のとき,
とする.ここで,は,無相関な増分をもつ複素数確率過程で,以下を満たす.
(,は角周波数,はの複素共役を表します)
【論文中の式はここまで】
のパワースペクトルをとし,として,論文ではパワースペクトルの定義を与えています.パワースペクトルは,正式にはパワースペクトル密度なので,確率密度関数をと書く流儀のように,こういった表現もあるのだと感じました.私が普段使っている表現で書けば,時系列の離散フーリエ変換を
として,
だと思います.
この場合,
となります.ここで,
であることを使いました.
ということで,パワースペクトルは,
だよと,論文では書いてあるのだと思います.正確には,
です.(そういえば,昔,研究会で会った計量経済学の先生が,密度の関数にを付けてないのを細かく指摘していたのを思い出しました.は絶対必要です.)
もう一つの定義は,パワースペクトルを逆フーリエ変換すると,自己共分散という形を示して,パワースペクトルを定義しています.