非整数ブラウン運動の増分の定義式は,
です.定常とか,数学的な細かいことは無視して,非整数ブラウン運動を表すなら,
ってことです.今回は,この形の積分をどーやって思いつくのかを,私の限られた知識だけで書いておきます.前回の記事も参考にしてください.
反復積分に関するコーシーの公式
の積分を,
と書くことにします.を2回繰り返し積分すると (部分積分の公式を使って計算してみます),
になります.
さらに,を3回繰り返し積分すると
Wikipediaの真似をしたくなかったので,部分積分だけで押し切りましたが,Wikipediaも参考にしてください.部分積分では,計算が面倒ですが,この計算を繰り返せば,次の,反復積分に関するコーシーの公式
が成り立ちそうです.
きちんとした証明は,数学的帰納法でやってください.つまり,
が成り立つことを仮定して,を計算し,
になることを示すということです.Wikipediaの説明のあるように,二重積分 (累次積分)の順序を交換して計算すると以下のようになります.
ここで,積分変数がギリシャ文字だと,中高生には見にくい (読めない)かもしれませんので, (ウプシロン)を, (タウ)をに書き換えます.
です.累次積分でこの領域を掃くことを考えれば,下の図のようになります.
もう一度最初からやります.途中で累次積分の順番を変えると,
となるので,コーシーの公式はでも成り立ちます.
非整数階積分と非整数ブラウン運動
反復積分に関するコーシーの公式では,は整数だけ許されます.しかし,非整数で考えても面白いんじゃないかと考えた人がいます.を非整数にも拡張したものが,ガンマ関数と考えることができるので,を実数として,階積分は,
でいいんじゃね,と考えたわけです.
非整数ブラウン運動では,
でした.上の階積分の式で,,として,さらに,の部分を,とすれば,この式になります.ここで,は,平均0,標準偏差の白色ガウスノイズです.
白色ガウスノイズを積分したものが,通常のブラウン運動です.積分を非整数階にしたら面白いんじゃね,ということで,非整数ブラウン運動に拡張したのだと思います.しかも,は,ハースト (Hurst)指数と一致するように決められるので,時系列の増分が長時間相関をもつ過程のモデルになっています.