ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【非整数ブラウン運動の数理】数値的にサンプルパスを生成

 最近,一番気に入っているアニメは「異世界おじさん」です.ということで,今回は,非整数ブラウン運動を表す数式

 \begin{eqnarray}  B_H(t) &=& \frac{1}{\Gamma(H+1/2)} \int_{-\infty}^{t} (t-s)^{H-1/2} \, dB(s) \end{eqnarray}

の意味を理解するために,この積分を離散化して計算してみます.この積分がオリジナルの論文

Mandelbrot, Benoit B., and John W. Van Ness. "Fractional Brownian motions, fractional noises and applications." SIAM review 10.4 (1968): 422-437

の表現と違う,とか文句言われても気にしません.

非整数ブラウン運動のサンプルパスの生成手順

離散化

 積分を部分求積法のように,時間幅 \Delta tで分けたパーツの和で近似すると,

 \begin{eqnarray}  B_H(t) &=& \frac{1}{\Gamma(H+1/2)} \int_{-\infty}^{t} (t-s)^{H-1/2} \, dB(s)   \\
&\approx& \frac{1}{\Gamma(H+1/2)} \lim_{n \to \infty} \sum_{s = t - n \Delta t}^{t-\Delta t} (t-s)^{H-1/2} \Delta B(s) \end{eqnarray}

のような感じだと思います.無限の過去まで数値的に扱うことはできないので,nはある程度大きな自然数にとることにします.

 ということで,nをできるだけ大きくとることにして,

 \begin{eqnarray}  B_H(t) &\approx& \frac{1}{\Gamma(H+1/2)} \sum_{s = t - n \Delta t}^{t-\Delta t} (t-s)^{H-1/2} \Delta B(s) \end{eqnarray}

を計算してみます.

ブラウン運動の増分

 式の中に登場する\Delta B(s)は,ブラウン運動の増分です.時間幅が\Delta tのとき,ブラウン運動の増分\Delta B(s)は,平均0,標準偏差\sqrt{\Delta t}正規分布に従う白色ノイズです.

 ですので,平均0,標準偏差1の標準正規乱数w(s)を使って,

  \Delta B(s) = w(s) \sqrt{\Delta t}

としました.上の図の上段右は,このサンプルです.その左は,その累積です.

 この増分に,上の図の中段左の重みをかけたのが,中段右の図です.図の下段左のB_H(100)は,これを全部足して計算しました.

ハースト指数Hの推定

 生成した時系列を検証するために,DMAでスケーリング指数を推定しました.今回は,時系列を積分せずにDMAを使ったので,傾きがHの推定値です.DMAの説明は過去の記事を参考にしてください.

 上の図の下段右にある赤丸のプロットの傾きが,設定したHと一致すればめでたしめでたしということです.

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