非整数ブラウン運動の定義式で登場するは,時刻
の1次元のブラウン運動の微小な増分です.ブラウン運動の増分って,とどのつまり,正規分布に従う白色ノイズなわけです.重要なのは,その分散が時間の増分
に比例する,つまり,
ということです.今回は,ここのところを理解するために,1次元のランダムウォークとブラウン運動のつながりを説明します.ここでいう「ブラウン運動」は,数学用語になった「ブラウン運動」のことです.

ランダムウォークモデル
ランダムウォーカーが動く空間の座標をで表します.初期条件として時刻
でランダムウォーカーは原点
にいるものとします.ここでは,時間刻みを
とし,各時間ステップでランダムウォーカーの変位を確率変数
で表します.この確率変数
は,
か
の2つの値のいずれかをとり (
),それらが実現する確率は,それぞれ,
,
とします.確率の合計は1なので,
です.

このとき,ステップ後の時刻
での,ランダムウォーカーの位置は,確率変数
として与えられます.ここで,は
の独立な複製です.
の期待値は,
の2乗偏差の期待値は,
です.
ステップ数と時刻
の関係は,
なので,
となります.は,ドリフトと呼ばれるベースラインの推移,
は拡散の程度を表しています.
より一般的な話にしようといましたが,このままだと長くなるし,関係のない話になるので,以下では,にしちゃいます.最初からそうすれば良かったですが,ここまで打ったので,ここから切り替えます.

ランダムウォークの極限をとって連続化 (そいつがブラウン運動だ)
ここからは,から出発して,
のとき,つまり,
のときに,,
の極限をとって連続的な軌道にしちゃいます.
話は単純で が有限になるには,
一定
になるように極限をとる必要があるってことです.ということで,を定数として,
とします.
上の関係を満たしながら,,
の極限をとった
が,ブラウン運動の軌道
です.
から出発というのは一般的ではないので,増分の形にして,
となるわけです.ウィーナー過程と呼ばれるブラウン運動では,です.
連続極限で増分の分布は正規分布になる
上の議論から,2点の増分は以下を満たします.
から,
になるまでに,たくさんの増分
が足されます.
は,
か
しかとりませんが,
から,
になるまでにたくさん (無限に)足すので,増分
は正規分布になります.有限の分散をもつ確率変数の和が正規分布に近づくということを数学的に証明したのが,中心極限定理です.
反省
数学とは違って,直感的にわかりやすく書こうと思いましたが,半端な感じになってしまいました.数学の本から入るのでは,難しく感じる方の参考になればと思います.