ケィオスの時系列解析メモランダム

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【フーリエ級数】周期関数をsinとcosの和で表す

我が家にも,ついに5G (第5世代移動通信システム)の波が来ました.我が家は「おうちWi-Fi SoftBank Air」を使っています.今週,この端末のランプが「5G」の受信を教えてくれました.ということで,原稿を依頼されている「フーリエ解析」の図の準備をかねて,今回は「フーリエ級数」のお話です.ここでの目的は,説明に役立つ図を作ることで,フーリエ級数の教科書的な説明ではないので,文章の説明は期待しないでください.

周期関数とは

 フーリエ級数では,周期的に同じ形が現れるグラフを対象にします.つまり,周期を2Lとすれば,

 f(x) = f(x + 2 L)

となる関数です.例えば下のグラフのような関数です.

周期関数の例.

下の図のように,不連続でも大丈夫です.ただし,|f(x)|の面積が有限な場合だけです.

周期関数の例.不連続でも|f(x)|の面積が有限なら大丈夫.

フーリエ級数

 上の例のような周期2Lの関数f(x)は,

 \displaystyle f(x) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} \left( a_n \cos \frac{n \pi x}{L} + b_n \sin \frac{n \pi x}{L} \right)

の形に展開できます.この展開をフーリエ級数展開と言います.細かいことですが,関数f(x)に不連続な点がある場合は,フーリエ級数展開はその離れた2点の中央の点を通ります.

 係数の\{a_0, a_1, b_1, a_2, b_2, \cdots\}は,

 \begin{eqnarray}a_n &=& \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} \! f(x) \cos \frac{n \pi x}{L} \, dx \\
b_n &=& \frac{1}{L} \int_{-L}^{L} \! f(x) \sin \frac{n \pi x}{L} \, dx
\end{eqnarray}

で求まります.

三角関数の直交性

 フーリエ級数展開の係数の\{a_0, a_1, b_1, a_2, b_2, \cdots\}を求める計算では,三角関数の直交性を使っています.これは,2つのベクトルが直交するとき内積が0になるってやつと同じことです.

 ここでは,関数f(x)g(x)内積

 \displaystyle  \int_{-L}^{L} \! f(x) \, g(x) \, dx

で定義します.f(x)g(x)の部分にサインとかコサインの関数を当てはめると,

 \begin{eqnarray} \int_{-L}^{L} \! \sin \frac{m \pi x}{L} \, \cos \frac{n \pi x}{L} \, dx &=& 0 \\
\int_{-L}^{L} \! \sin \frac{m \pi x}{L} \, \sin \frac{n \pi x}{L} \, dx &=& \left\{
\begin{array}{ll}
0 & (m \neq n) \\
L & (m = n)
\end{array}
\right. \\
\int_{-L}^{L} \! \cos \frac{m \pi x}{L} \, \cos \frac{n \pi x}{L} \, dx &=&  \left\{
\begin{array}{ll}
0 & (m \neq n) \\
L & (m = n)
\end{array}
\right. 
\end{eqnarray}

となります.これらの式で,0になるってことは,ベクトルのときみたいに,お互いが直交しているってことです.

 今回は,上の積分を計算して証明するとか,よくあるお話は飛ばして,グラフを観察してみます.

グラフで三角関数の直交性を観察

 ここでは,例として

 「 f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L}フーリエ級数で表せ」

という,ふざけた問題を考えます.こんな感じの問題,テストで出す先生います.学生の理解度を見るにはよい問題かもしれません.答えは,もちろん,

  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L}

です.

 答えは見ただけで分かるけど,あえて,
 
 \begin{eqnarray} \int_{-L}^{L} \! \sin \frac{3 \pi x}{L} \, \cos \frac{n \pi x}{L} \, dx
\end{eqnarray}

 \begin{eqnarray} \int_{-L}^{L} \! \sin \frac{3 \pi x}{L} \, \sin \frac{n \pi x}{L} \, dx
\end{eqnarray}

について考えてみます.とはいえ,計算しません.グラフを観察します.

 n=1のとき,下の図のようになります.左側が,\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \cos \frac{n \pi x}{L}の説明用で,右側が\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \sin \frac{n \pi x}{L}の説明用です.これらの積は,下側の実線のグラフになるので,全面積を求めると,プラス側の面積 (赤)とマイナス側の面積 (青)がちょうど同じになり,積分が0になります.左下のグラフはそんな気がする程度ですが,右下のグラフでは,赤と青が等しいことが見て分かります.

(左上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と  f(x) = \cos \frac{\pi x}{L} (桃破線)のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と f(x) = \sin \frac{\pi x}{L} (水破線)のグラフ.(左下)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \cos \frac{\pi x}{L}の積のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \sin \frac{\pi x}{L} の積のグラフ.

 n=2のとき,下の図のようになります.左側が,\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \cos \frac{2 \pi x}{L}の説明用で,右側が\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \sin \frac{2 \pi x}{L}の説明用です.これらの積は,下側の実線のグラフになるので,全面積を求めると,プラス側の面積 (赤)とマイナス側の面積 (青)がちょうど同じになり,積分が0になります.これは,下のグラフをみれば0になっていることが分かります.

(左上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と  f(x) = \cos \frac{2 \pi x}{L} (桃破線)のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と f(x) = \sin \frac{2 \pi x}{L} (水破線)のグラフ.(左下)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \cos \frac{2 \pi x}{L}の積のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \sin \frac{2 \pi x}{L} の積のグラフ.

 n=3のとき,下の図のようになります.左側が,\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \cos \frac{3 \pi x}{L}の説明用で,右側が\sin \frac{3 \pi x}{L} \, \sin \frac{3 \pi x}{L}の説明用です.これらの積は,下側の実線のグラフになります.左下のグラフでは,プラスの面積 (赤)しかないので,0でないことが分かります.右下は,プラスとマイナスがちょうど同じになり,積分が0になることが分かります.

n3

 n=4のとき,下の図のようになります.全面積を求めると,プラス側の面積 (赤)とマイナス側の面積 (青)がちょうど同じになり,積分が0になることが分かります.

(左上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と  f(x) = \cos \frac{4 \pi x}{L} (桃破線)のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} (黒実線)と f(x) = \sin \frac{4 \pi x}{L} (水破線)のグラフ.(左下)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \cos \frac{4 \pi x}{L}の積のグラフ.(右上)  f(x) = \sin \frac{3 \pi x}{L} f(x) = \sin \frac{4 \pi x}{L} の積のグラフ.

まとめ

 三角関数の直交性を,何とかアニメにしたかったのですが,よいアイデアが思いつきませんでした.ホームページの良さは、無駄に長い文章でも書くことができるし,動画を載せることもできることだと思います.なるべくアニメで,数学的な概念を説明していきたいと思います.