マクローリン展開について簡単に説明します.1年くらいぶりの,ひさびさの更新です.古い記事を,毎日,何百人も参考にしてくれているようで,嬉しい気持ちがあるので,リクエストにこたえて記事を書きます (わかりやすいか自信がありませんが).
マクローリン展開以前の超基礎:方程式と恒等式
【注意】方程式と恒等式の違いを知っている優秀な方々は,私の記事ではなく,他の方のマクローリン展開の解説を読んだほうが役に立つと思います.
変数についての方程式は,に隠れた値を探すための条件式です.例えば,方程式
は解くことができて,答えは,です.この答えが正しいかどうかは,に値を代入すれば確かめられます.例えば,を代入すれば,
になります.
一方で,変数についての恒等式は,でつながれた左右が,全く同じものになっています.つまり,「自分=自分」,「」,「」です.左右が全く同じものなので,にどんな値を代入しても,等しくなります.例えば,恒等式,に,何を代入しても正しいし,両辺の微分をしても,両辺の逆数や対数をとっても,等しいままです.なぜなら,左右が全く同じものだからです.さらに,当たり前に感じる説明をつづけると,を定数とするとき,
が成り立つのであれば,,,です.また,
が成り立つのであれば,,です.
中高校生にするような説明をしましたが,
です.
見た目が違うけど,多項式と恒等式の関係になる
マクローリン展開の例として,のマクローリン展開を書いてみると,
になります.この式が不思議なのは,恒等式は「自分=自分」なのに,左右で見た目が全然違うことです.左辺はなのに,右辺は,無限に項が続く多項式 (でできた式)です.
具体的な数値を代入して計算する場合,無限個の項を計算できないので,右辺の多項式を途中で打ち切ったりします.の値が0に近いときは,何乗もすると,高次の項はほぼ0なので,無視しても影響は小さいです.なので,マクローリン展開は,多項式を途中で打ち切って,近似式として使うことができます.
私は数学者ではないので,数学的に厳密なことは完全に無視して説明すると,マクローリン展開というのは,「式を多項式で表しちゃうということ」です.ちょっと,かっこつけていうと,「のまわりで多項式展開する」ということです.
自分でマクローリン展開を計算したいときは,次の関係式を使います.
マクローリン展開
関数のマクローリン展開は,
です.は何度でも微分できる必要があります.
何で上の関係が成り立つのかは,が多項式と恒等式になることを仮定すれば導けます.つまり,を定数として,
を仮定します.これは,恒等式なので,両辺のに同じ値を代入しても,両辺を微分しても等しいはずです.
まず,を代入すれば,
になるので,の部分には,が入ることがわかります.
つぎに,の両辺を微分した,
に,を代入すれば,
であることがわかります.
これを繰り返せば,
であることが導けます.
マクローリン展開の例
ここでは,実例として,
をマクロ―リン展開してみます.つまり,上の公式で の場合を考えます.
これを,繰り返し微分してみると,
になるので,なんとなく,
になりそうです (細かいことは気にしないので証明なんてしません).これに,を代入すれば,
になるので,マクローリン展開の式に代入すれば,
になります.実は,この式は,すべてので成り立ちません.の範囲で成り立ちます.この領域を収束半径と言います.を代入すれば,発散するので,これがダメそうな雰囲気がすると思います.