今回は,自己回帰過程の特性方程式の解と定常性の話です.特性方程式の解が,単位円の内側とか外側とかいう話の説明をします.
次自己回帰過程 (以下のは,平均0,分散の白色ノイズです)
をラグオペレータを使って書けば,
と書けます.これは,以前にパワースペクトルを求めるときにも書きました.今回は分母のを,なぜかで置き換えた式,
の解 (根)についてのお話です.(根って何?解と違うの?という疑問があるかたは,「根」では重解も,1個ずつメンバとして,大切に数えてあげるのだと覚えてください.同じものです)
この式を特性方程式と呼びます.
ほとんどの教科書や,ホームページでは,この方程式の解(根)が,すべて単位円の外側にあれば (絶対値が1よりも大きければ),自己回帰過程は安定とか,弱定常とかさらっと書いてあります.何で?って疑問に思う人は多いと思います.ということで,説明します.
とすれば (根なので必ずメンバはM個です),特性方程式は,
と因数分解できます.これを,元の自己回帰過程の式に反映させると (zをLにして),
となります.右辺の分数の部分は必ず部分分数分解できるので (これは認めてください),
となります.には定数が入ります.
ですで,
の右辺の各項が収束すれば,この過程は安定とか,定常とか,そういうことです.要は,が,で発散しなければ,めでたしめでたしです.
ということで,
について考えてみます.前にもやりましたが,分数の部分について,マクローリン展開,あるいは,無限等比数列の和の公式をまねて展開します.
これの分散を計算すれば (分散をで表します)
となります.公比が,の等比数列になっています (が複素数の場合,にした方がいいかも).これが,収束する条件は,
なので,
であれば (複素数でも実数でも,絶対値が1より大きければ),上で計算していた分散は,
に収束します.これと似た計算が個ありますが,特性方程式の解 (根)の絶対値が,すべて1より大きければ,全体も収束します.ということで,
ということがわかります.途中がわからなければ自分で勉強してください.他にもっとエレガントな方法や,間違いがあるかもしれません.他人を安易に信じないでください.