ケィオスの時系列解析メモランダム

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【確率過程・時系列解析】自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係

自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係についての話です.何言っているかわからない人は,下にまとめた関連記事を先に見てみてください.

ちょっと前に,パワースペクトルは,自己共分散(自己相関)のフーリエ変換だ,という話をしました.ということは,フーリエ変換とその逆変換(逆フーリエ変換)の1対1の熱い友情関係から,

 \begin{eqnarray}
S(f_k) &=& \sum_{j=-\infty}^{\infty} C(\, j \,)\, e^{- i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

であれば,

 \begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=& \frac{1}{N}\sum_{k=-\infty}^{\infty} S(f_k) \, e^{i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

みたいな関係が成り立つような気がします.その感覚はもっておいてほしいですが,この式はちょっと間違っています.
 
 離散時系列の場合は,ナイキスト周波数というのがあって,周波数が

 \displaystyle -\frac{1}{2} \le f_k \le \frac{1}{2}

に制限されているので,時系列の長さが偶数のときは,

 \begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=& \frac{1}{N} \sum_{k=-N/2}^{N/2} S(f_k) \, e^{ i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

とした方がよさそうです (今回はやりませんが,正しいか自分で導いてみてください).

 多くの文献には,S(f_k) の周期性を使い,時系列の長さが奇数でも,偶数でも大丈夫な書き方,

 \begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=& \frac{1}{N} \sum_{k=0}^{N} S(f_k) \, e^{i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

が載っています (いや,載ってません).ひとつ前の表現

 \begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=& \frac{1}{N} \sum_{k=-N/2}^{N/2} S(f_k) \, e^{i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

で,

 \displaystyle \Delta f_k = \frac{1}{N}

と考えられるので,\displaystyle f_k = \frac{k}{N} ( [-1/2, 1/2])に注意して,N \to \inftyとしてみます.つまり,区分求積法で,

\begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=&\lim_{N \to \infty}\sum_{k=-N/2}^{N/2} S(f_k) \, e^{ i 2 \pi f_k j} \Delta f_k = \int_{-1/2}^{1/2} S(f) \, e^{i 2 \pi f j}\, df
\end{eqnarray}

となります.この形が,載っている文献が多いと思います.片方が\Sigma

\begin{eqnarray}
S(f_k) &=& \sum_{j=-\infty}^{\infty} C(\, j \,)\, e^{- i 2 \pi f_k j}
\end{eqnarray}

で,もう片方が\int

\begin{eqnarray}
C(\, j \,) &=&\int_{-1/2}^{1/2} S(f) \, e^{i 2 \pi f j}\, df
\end{eqnarray}

となりバランスが悪いですが,N \to \inftyを想定できる数学的な世界では,そうなってます.

 本当は,パワースペクトルを自己共分散(自己相関)に結びつける,もう一つの表現を紹介したかったのですが,眠いので次回にします.最近は,学生の科学的探究心のなさに,残念な気持ちになります.科学の感動は,問題を解けるようになったとか,テストでいい点を取れたとかではないと思います.自然界には,数理的に美しい構造があるのだと気づいたときに,大きな感動があり,私の場合はその感動を求め続けているのだと思います.