ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

時系列解析

【Rで時系列解析】1/fゆらぎを積分すると傾き2だけ変化(数値実験)

前回は,時系列の積分がパワースペクトルにもたらす変化「ゆらぎを積分すると,ゆらぎになる」を解析的に示しました.chaos-kiyono.hatenablog.com今回は,数値実験です. 非整数ガウスノイズ(左)とその積分(右),下は対応するパワースペクトルのlog-log…

【時系列解析】1/fゆらぎを積分するとパワースペクトルの指数が2だけ変化(解析的導出)

今回は,「ゆらぎを積分すると,ゆらぎになる」ことの説明です.つまり,時系列のパワースペクトルが,低周波数側で に従うとき,を積分した時系列 ] ()のパワースペクトルが,低周波数側で になることの説明です(下図参照).逆に,差分をとるとになります…

【時系列解析】自己共分散,自己相関,自己相関係数,何が違う?

自己共分散 (autocovariance), 自己相関 (autocorrelation), 自己相関係数 (autocorrelation coefficient), この3つの違いを知ってますか?ここで言いたいことは,これらの定義は分野によって違うので,名前にこだわるな,思い込みは捨てろ,教科書や論文…

【時系列解析】1次自己回帰過程の記憶(自己相関)はいつ消える?

私の研究室の学生は,私があまりにしつこく1次自己回帰過程の話をするのでうんざりしているかもしれません.さらに,しつこくやっていきます.1次自己回帰過程 (,は平均0,分散の白色ノイズ)のパワースペクトルは, です.今回は,このパワースペクトルのグ…

【時系列解析】2次自己回帰過程のサンプル時系列から自己共分散関数とパワースペクトルを推定

本日のセミナーの課題は,2次自己回帰過程 ]のサンプル時系列から自己共分散関数とパワースペクトルを推定することです.]は,平均0,分散の白色ノイズです.とりあえず,,でやってみて,他のパラメタでも調べてみてください.これまでの知識を使えば簡単…

【時系列解析】時系列の時間スケールを変えて見る

時系列解析で私が大切にしていることは,「自分の目で時系列を見る」ことです.数値列ではなく,グラフにして見ます.とはいえ,ただ,時系列全体をグラフに描けば良いのではなく,「時間スケールを変えて時系列を見る」ことが必要です.ここで,「スケール…

【時系列解析】サンプリング間隔がΔtの離散時系列のパワースペクトル

今回は,サンプリング間隔が1ではなく,のときのパワースペクトルについての説明です.スペクトル解析や時系列解析についての教科書では,サンプリング間隔が1の場合のみ扱っているものが多いので,迷うことがあると思います.サンプリング間隔の長さの時系…

【時系列解析】時系列の長時間相関解析(フラクタル解析)

パワースペクトル解析,長時間相関解析などについて,私の古い解説動画のリンクをまとめておきます.興味があれば見てみてください.中途半端なところで解説動画が止まっているので,このブログで文章での説明がある程度まとまれば,新しく解説動画を作って…

【Rを使った時系列解析】有限の周波数領域で1/fゆらぎ(ピンクノイズ)になる時系列を生成

今回は,周波数がの領域で1/fゆらぎ(ピンクノイズ)の特性を持つサンプル時系列の生成をやります.詳しい説明はしませんが,1/fゆらぎの生成メカニズムとして,自己共分散関数が指数関数的な減衰を示すサブシステムの和を考えるものが提案されています(下…

【Rを使った時系列解析】1/fゆらぎ(ピンクノイズ)を生成

今回は,狭い意味での1/fゆらぎを生成します.ピンクノイズとも呼ばれます.なぜピンクかといえば,色とのアナロジーです.可視光の低周波数側の端が赤色なので,低周波側,つまり,白色よりも赤色が強調されていると考えられるので,色で言えば,どちらかと…

【時系列解析】1/fゆらぎ,1/fノイズ,何がおもしろいの?

今回は,何で「1/f(えふぶんのいち)ゆらぎ」とか,1/fノイズに注目するのか,何が不思議なのか,何がおもしろいのか,というお話です.1/fゆらぎについて,歴史と最新の成果を正確に記述することは,私には難しいので,まずは,現状の私の知識,印象,思い…

【Rを使った時系列解析】非整数ガウスノイズの生成

今回は,Rを使って非整数ガウスノイズ(fractional Gaussian noise)を生成します.しかも,一切,パッケージに頼らずにです.そもそも,非整数ガウスノイズとは何かというと,ポイントは以下です: ガウスノイズなので,分布は正規分布に従います. 自己共…

【Rで時系列解析】Detrending moving average algorithm (DMA)を使った長時間相関スケーリング解析

今回はDetrending moving average algorithm (DMA)をRでやってみます.DMAの参考文献はこれです(ダウンロードできない人が多いと思います.オープンアクセスの良い論文を見つけられませんでした): Detrending Moving Average algorithm: a brief review …

【Rで時系列解析】Detrended Fluctuation Analysis (DFA)を使った長時間相関スケーリング解析

今回はDetrended Fluctuation Analysis (DFA)をRでやってみます.パッケージもあると思いますが,パッケージなしで実現します.まずは,解析する時系列の準備です.これは,longmemoパッケージを使います.分析したい時系列がある場合は,このRスクリプトは…

【Rで時系列解析】自分で指定した自己共分散関数に従うサンプル時系列の生成

今回は,自分で自己共分散関数を指定し,その自己共分散関数に従う確率過程のサンプル時系列を生成する方法の説明です.自己共分散とパワースペクトルの関係を理解した上で,Rのfftコマンドを使いこなせれば簡単です.とはいえ,私は理解力がないので,他の…

【Rで時系列解析】1次自己回帰過程の自己共分散関数とパワースペクトルの推定

今日のセミナーの課題は, 問題 数値的に生成した1次自己回帰過程のサンプル時系列の,自己共分散関数とパワースペクトル(ピリオドグラム)を推定し,理論値と比較せよ.推定は,複数のサンプル時系列を使って平均として求めよ.解答としては,以下のような…

【時系列解析】パワースペクトルで相関のイメージをつかむ

今回は,パワースペクトルから長時間相関のイメージをつかむための説明です.長時間相関では,長時間の正の相関と,長時間の負の相関があります.ここでは,「相関」という用語を,自己相関関数ではなく,「似た値の出やすさ」くらいの意味で使っていること…

【Rで時系列解析】fftを使ってパワースペクトルを推定(ピリオドグラムを計算)

Rの高速フーリエ変換のコマンドfftを使った結果の見方と,その結果を使ったパワースペクトルの計算について説明します.今回は,以前の chaos-kiyono.hatenablog.com のつづき(補足)です.パワースペクトルの推定は奥が深い(いろいろとテクニックがある)…

【時系列解析】長時間相関って何だ

Detrended fluctuation analysis (DFA)の解釈の説明で, のときが無相関 のときが長時間の負の相関(長時間反相関,長時間逆相関) のときが長時間の正の相関(長時間正相関) と説明されることがよくあります.今回は,私がこの説明に抱く違和感と,私が考…

【Rでフラクタル】非整数ブラウン運動Zoomingアニメの作成

非整数ブラウン運動は,横と縦方向の拡大倍率を,対とすれば,時系列の統計的性質が拡大前後で同じになる過程です.は,ハースト(Hurst)指数と呼ばれるパラメタで,非整数ブラウン運動はの値で特徴付けられます.数式で理解する前に,非整数ブラウン運動の…

【Rで時系列解析】FFTを使った離散フーリエ変換の実際(各成分の周波数について)

RでFFT(Fast Fourier Transform)を計算するコマンドfftの結果と,離散フーリエ変換の関係,特に,周波数について説明します.実数の時系列を] ()とします.時系列解析では,とすることが多い(C言語やpythonも0から)ですが,ここではRに合わせます.つま…

【心拍変動】NNって何,RRと違うの?

代表的な心拍変動指標(特に時間領域指標)の名前には,NNが入っていることが多いです.例えば,meanNN,SDNN,pNN50などです. meanNN すべてのNN間隔の平均値 SDNN すべてのNN間隔の標準偏差 pNN50 隣り合うNN間隔の差が50 msより長い拍の割合(%) 心臓…

【Rで時系列解析】1次自己回帰過程のパワースペクトル

今日のセミナーの課題は,以下です. 問題1 1次自己回帰過程の時系列サンプルを生成せよ. ここで,は,の定数,は,平均0,分散の白色ノイズである. ,とせよ. 問題2 1次自己回帰過程のパワースペクトルを推定せよ.100個の時系列サンプルのパワースペク…

【時系列解析】フーリエ変換を使った時系列の分解

時系列解析で,弱定常とか,ガウス過程とかを前提とする場合は,パワースペクトルがとにかく基本.それを理解せずに,なんとなく数式をこねくり回したり,名前が格好いい解析法を中身を理解せずに使ったりしても,なんか学問として浅い感じがします.といっ…

【時系列のフラクタル解析】DMAの使い方(C言語プログラムの配布と使い方)

時系列の長時間相関解析やフラクタル解析(統計的自己アフィン性の解析)を行うのに,最近の20年間でDetrended fluctuation analysis (DFA)が使われることが多くなっています.DFAは神話化がはじまっており,その本質や欠点がきちんと理解されていないという…

【時系列のフラクタル解析】DMCAの実際(最適ラグの推定)

今回は,Detrending Moving-Average Cross-Correlation Analysis (DMCA)でラグを推定します.ここでは,DMCAのC言語プログラムをコンパイルしたもの(各自コンパイルしてください),windowsのコマンドプロンプト,Rを使います.下記の論文"Generalized theo…

【Rでフラクタル解析】長時間相互相関時系列の生成(ラグ指定あり)

下記の論文"Generalized theory for detrending moving-average cross-correlation analysis: A practical guide"の解説シリーズです. doi.orgまずは,detrending moving-average cross-correlation analysis (DMCA)で,何をやっているの?ということを少し…

【Rで時系列解析】純音とパワースペクトル

教科書的には,時系列解析の基本はパワースペクトルです.とはいってもこれは,ガウス過程(正規分布に従う過程)中心主義,そして,自己相関関数中心主義の立場では,パワースペクトルが世界のリーダーだよね,ということです(中心主義とかは私が勝手に権…

【Rで時系列解析】白色ノイズと桃色ノイズを音で体験

時系列解析では,ホワイトノイズとか,ピンクノイズ,レッドノイズとか登場します.私は,ホワイトノイズ以外の呼び方は,ほとんど使いません(色じゃないし).これらの色の名前がついたノイズは,それらの時系列のパワースペクトルの形状と色のスペクトル…

【Rで時系列解析】長時間相関時系列の生成

時系列の長時間相関解析とか,フラクタル解析とか,そう呼ばれる解析を試してみるためには,時系列のサンプルが必要です.そのために,Rを使って,時系列を生成する方法を紹介します.ここでは,longmemoパッケージを使います.パッケージをインストールして…