ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【Rで時系列解析】ヒルベルト変換で振動のエンベロープを抽出

振動する時系列の中には,振動の振幅の変化に役立つ情報がある場合があります.例えば,呼吸信号(換気量や気流)は振動します.そのとき,心拍数に影響を与えるのは,振動の周期ではなく,振幅です.ということで,今回はその「振幅」の情報を取り出すため…

【Rで時系列解析】AICで多変量自己回帰過程の次数を決定

今回は,2変量の自己回帰過程 について最小2乗法でパラメタを推定し,AICで次数を決定します.お気楽な"vars"パッケージのVARなどは使いません.計算過程や式を確認できるように,Rスクリプトを書きました.Rスクリプトは一番下に掲載してあります.AICにつ…

【Rで時系列解析】AICを使った自己回帰過程の次数推定

今回は,時系列に対して自己回帰過程をフィットし,最適な次数を決定します.自己回帰過程の次数の推定には,赤池情報量規準 (AIC: Akaike Information Criterion)を使います.AICの導出をここで説明することは,私には難しいのでやりません.でも,計算過程…

【Rで時系列解析】コヒーレンス (coherence)の計算

今回は,コヒーレンス (coherence,あるいは,magnitude-squared coherence)の計算のメモです.コヒーレンスは,2つの時系列間の相関を周波数領域で見る方法です.2つの信号の周波数成分に,線形な入出力関係があれば1に近くなります.なければ0です.とはい…

【Rで時系列解析】最小2乗法で自己回帰過程の当てはめ

観測された時系列に最小2乗法で自己回帰過程を当てはめる計算のメモです.どんな形の過程を仮定しても,基本的な考え方を理解しておけば,係数を求めることができます.楽をしたければ,arとか,varsパッケージなどを使えば良いと思います.しかし,お気楽…

【Rで長時間相関】ARFIMA(0, d, 0)のAR過程近似を数値的に検証

前回に続き,ARFIMA(0, d, 0)を,無限次の自己回帰過程 (AR過程: autoregressive process)で表現する話です.今回は数値実験です. 1. 基本事項:long AR過程表現 2. 数値計算のポイント 3. 数値計算結果 Rスクリプト 前回の記事は,これです. chaos-kiyono…

【確率過程】ARFIMA(0, d, 0)のAR過程近似

長時間相関を示すARFIMA(0, d, 0)を無限次の自己回帰過程 (AR過程: autoregressive process)として近似した形のメモです.これを考えるねらいは,長時間相互相関過程のGranger因果性を調べる方法を検討したいからです.既に,論文があれば教えてください.長…

【Rで時系列解析】Savitzky-Golayフィルタで平滑化

今回はギザギザ,凸凹したデータの平滑化法の一つであるSavitzky-Golayフィルタの紹介です. Savitzky-Golayフィルタの考え方 (2次でスケール5の例):部分区間に多項式をフィットして中央の値を平滑化された値として採用する.実用上は,畳み込み和を使って…

【論文メモ】グレンジャー因果性のオリジナル論文Grainger (1969) : (その2)因果性,フードバック,瞬時的因果性,因果性ラグ

Grainger因果性のオリジナル論文 [Granger, C. W. (1969). Investigating causal relations by econometric models and cross-spectral methods. Econometrica: journal of the Econometric Society, 424-438]に書いてあったことのメモです.前回の続きです…

【論文メモ】グレンジャー因果性のオリジナル論文Grainger (1969) : (その1)パワースペクトルの定義

これまでの人生で,グレンジャー因果性について真剣に取り組んでこなかったので,反省して最近勉強をはじめました.ということで,Graingerのオリジナル論文 [Granger, C. W. (1969). Investigating causal relations by econometric models and cross-spect…

【Rで時系列解析】グレンジャー因果 (Granger causality)の周波数領域表現を数値実験で検証

グレンジャー因果 (Granger causality)のGewekeのアプローチを少しずつ理解していきます.前回の説明の続きで,今回は数値実験をします. chaos-kiyono.hatenablog.com 1. 問題設定 単純な例から考えはじめないと,私には理解できません.一般的な表現を見て…

【時系列解析】グレンジャー因果 (Granger causality)の周波数領域表現

グレンジャー因果 (Granger causality)の評価についてのGewekeのアプローチを理解するために,2変量時系列でその方法をまとめます.2よりも多い変量だと私には難しいので,まず,2変量で考えます.これは,自分の理解を深めるためのメモです.Gewekeの論…

【Rで時系列解析】Rでパワースペクトル推定:心拍変動解析での実際

Rで時系列のパワースペクトルを推定したいとき,もっともお気楽なのは,"spectrum"というコマンドを使うことだと思います.今回は,心拍変動 (RR間隔時系列)のスペクトル解析で"spectrum"コマンドを使った実例を紹介します.ちなみに,例として使用したRR間…

【Rで時系列解析】Rでspectrumを使ったパワースペクトル推定におけるspansの設定(数値デモ)

Rのコマンド"spectrum"のオプション"spans"の設定で,パワースペクトルの推定結果がどうなるかのデモです."spans"が何かは,前回の記事を参考にしてください. chaos-kiyono.hatenablog.com 時系列の生成については,以下の記事を参考にしてください. chao…

【Rで時系列解析】スペクトルウインドーを使ったパワースペクトルの平滑化:Rの"spectrum"での"spans"オプションの意味

今回は,離散フーリエ変換でえられるギザギザなパワースペクトルを,滑らかにする「平滑化」についてです.いろいろ書きたいことはありますが,まずは,Rでお世話になることが多い"spectrum"というコマンドのオプション"spans"について説明します.今回の説…

【確率過程の基礎】線形確率過程

線形確率過程の定義が曖昧なまま,「非線形何たら」とか感覚的な話をする論文が増えていると感じます.心拍変動指標では,パワースペクトルの両対数プロットの傾きが非線形指標に分類されて,もう30年くらいたちます (何で非線形なの?).ということで今回は…

【Rで聴覚の不思議】無限にのぼるドレミファソラシド:シェパード・トーン

前回に続き「シェパード・トーン」(Shepard tone)のサンプルを作成してみました.今回は,無限に登り続ける音階です.www.youtube.com 作り方の詳細は前回の記事を参照してください (それほど詳しくありませんが). chaos-kiyono.hatenablog.com 今回のポイ…

【Rで聴覚の不思議】無限音階「シェパード・トーン」の紹介

最近,音の認知について少しずつ勉強しています.今回は「錯聴」と呼ばれる音のイリュージョン (錯覚)の話です. 有名な錯聴の一つに「シェパード・トーン」(Shepard tone)と呼ばれる,無限に音程が上昇していくように聞こえる音があります.私も自分でその…

【Rで時系列解析】相乗対数正規過程に従う非ガウスゆらぎ

自然界で観測される時系列には正規分布に従わないものがたくさんあります.正規分布はガウス分布とも呼ばれるので,正規分布に従わない確率過程は「非ガウス過程」と呼ばれます.時系列であれば,「非ガウス時系列」ですが,私はもっとやわらかい響きが好き…

【Rで時系列解析】1/fノイズの自己共分散 (自己相関)関数は対数関数で,べきじゃない

今回は,1/fノイズ (ピンクノイズ)の自己共分散 (自己相関)関数についての話です.つまり,パワースペクトルが となる時系列の自己共分散 (自己相関)関数は, ということを説明します.解析的に導出しようかと思いましたが,この論文 doi.org の流れをなぞる…

【Rでピンクノイズ】ピンクノイズ (1/fゆらぎ)の生成方法のまとめ

これまでに,ピンクノイズ (1/fゆらぎ)のサンプル時系列の生成方法について,私が知っているものは,ほぼすべて紹介しました (自己相関関数を指定するものだけ説明してません).今回は,ピンクノイズ (1/fゆらぎ)の生成方法をまとめておきます. Rのパッケー…

ピンクノイズ (1/fノイズ)で睡眠改善?

ピンクノイズ (1/fノイズ)を聴く効果については,いろいろな説があるようです.例えば,以下のページ muysalud.com では, 眠りにつくのを助ける 深い眠りにいざなう 記憶力を改善させる 集中力を高める という効果があると説明されています.私は,ピンクノ…

【Rで時系列解析】1/fノイズ (ピンクノイズ)時系列の生成:中点変位法

今回は,中点変位法 (midpoint displacement algorithm)で,1/fノイズ (ピンクノイズ)のサンプル時系列を生成します.元々,中点変位法は,非整数ブラウン運動のサンプルパス (サンプル時系列)を作る方法ですが,非整数ブラウン運動をわずかにはみ出た領域を…

【Rで時系列解析】中点変位法 (midpoint displacement algorithm)で非整数ブラウン運動のサンプルパスを生成

1次元の非整数ブラウン運動 (fractional Brownian motion)のサンプルパス (時系列)の生成方法の一つ「中点変位法」(midpoint displacement algorithm)について説明します. 中点変位法で作成した非整数ブラウン運動のサンプルパス (H=0.8)この話は,「フラ…

【Rで時系列解析】白色ノイズのm階積分 (和分)過程のパワースペクトル (数値実験)

前に,階積分 (和分)過程のパワースペクトルの記事を書いたときに導いた結果,分散の白色ノイズの階差分過程の時系列のパワースペクトルは, 階積分 (和分)過程の時系列のパワースペクトルは, について,数値実験で確認していなかったので,やっておきます…

【時系列解析】非整数積分 (和分)があれば,パワースペクトルはもっと自由:ARFIMA(0, d, 0)の半歩手前から大きく外れてみる

今回はパワースペクトルが,を定数として, の形になる,差分方程式で記述される確率過程を考えます.前の記事 chaos-kiyono.hatenablog.com で,m階積分 (和分)過程のパワースペクトル(もどき)を計算しました.つまり, 分散の白色ノイズの階積分 (和分)…

【時系列解析】m階積分 (和分)とパワースペクトル:ARFIMA(0, d, 0)の一歩手前

今回は,Autoregressive fractionally integrated moving average process (ARFIMA)への導入の手前です.ARFIMAの日本語訳は,私が訳せば「自己回帰非整数積分移動平均過程」,インターネット検索でよく見る訳は「自己回帰実数和分移動平均過程」です.MA (m…

【時系列解析】ピリオドグラムって何?よくわかりません

最近,「ピリオドグラム」(periodogram)とか「ピリオドグラム法」って何を意味するのかわからなくなりました.きっかけは,セミナーで使っている北川源四郎先生の時系列解析の本です.人のせいにしてすいません. 私は,periodogramを,ずーっと(20年ほど…

【Rで時系列解析】パワースペクトルの平均化処理

パワースペクトルを推定する数値実験を,少しずつやっていきたいと思います. 平均化処理ってやったほうがいいかも,というのが今回の感想です. Rでパワースペクトルを推定するとき,"spectrum"というコマンドを使えばいいんでしょ,と考えている人も多いと…

【Rで時系列解析】パワースペクトルの平均処理

本日のセミナーの課題を,私なりこなしました.パワースペクトルを推定するときは,時系列をまるごと1本としてパワースペクトルを計算するよりも,時系列を部分区間に分割して,複数のパワースペクトルの平均をとった方が,パワースペクトル推定のばらつきが…