ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【基礎工学のための数学】線形性と特性方程式と重ね合わせ:線形微分方程式と線形差分方程式の解

時系列解析の応用的な論文で「非線形性」という用語が使われることがあります.非線形というのは,線形でないという意味です.医学・生理学,医工学分野などの応用分野では,「非線形性」が印象だけで使われていて,意味が崩壊しているような感じがします.…

【確率過程・時系列解析】2次自己回帰過程の自己共分散 (自己相関)関数

2次自己回帰過程の自己共分散 (自己相関)関数を一つの式で表しておきます.差分方程式の形での表現は,この前のセミナーで学生が導いてくれたし,インターネットで検索すればいくらでも出てくると思います. 2次自己回帰過程の自己共分散とパラメタの関係 2…

【確率過程・時系列解析】1次自己回帰過程のパワースペクトルから自己共分散(自己相関)を求める

理由は良く知りませんが,自己共分散(自己相関)関数を使ってパワースペクトルを定義する流儀が存在します.そんな流儀,知ったことではないので,ここでは,1次自己回帰過程のパワースペクトルから,自己共分散(自己相関)を求めてみます.今回は,ここま…

【基礎工学のための複素関数論】留数定理

今回は留数定理です.留数定理を知っておいてほしい理由は,自己回帰過程の分解の計算に使うからです.留数定理では,下図のように周回積分する単一閉曲線の内側に,特異点と呼ばれるトゲや穴,,が複数ある場合を扱えます. 複素平面にある特異点のイメージ…

【基礎工学のための複素関数論】複素積分で覚えておきたいポイント

複素積分について勉強したでしょうか.私は数学者ではありませんが,昔,ある大学で,線形代数とか,複素関数論とか,数学の基礎科目の講義を一通り担当していました.毎週6~7コマ担当なので,結構疲れて,肩が痛かったです.その当時は,お前の仕事は講義…

【確率過程・時系列解析】自己回帰過程のパワースペクトルと自己共分散(自己相関)の関係(複素積分表示)

今回は,自己回帰過程について,パワースペクトルの複素積分で,対応する自己共分散(自己相関)を表します.これは,「次自己回帰過程のパワースペクトルは,1次自己回帰過程と2次自己回帰過程のパワースペクトルの和になっている」あるいは,「次自己回帰…

【Windows・R】フォルダのパスを調べる

Rスクリプトでファイルを読み込みたいとき,そのファイルがあるフォルダのパスの情報が必要です.今回は,そのフォルダのパスを調べる方法の説明です. フォルダのパスをコピーするまで 手順は以下です. 1. エクスプローラで,読み込みたいファイルがあるフ…

【確率過程・時系列解析】自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係

自己共分散(自己相関)とパワースペクトルの関係についての話です.何言っているかわからない人は,下にまとめた関連記事を先に見てみてください.ちょっと前に,パワースペクトルは,自己共分散(自己相関)のフーリエ変換だ,という話をしました.という…

【心拍変動解析】心拍変動指標はどれを使えばいいの?

心拍変動を研究や商品開発で使いたいとき,まず,参照すべき論文があります.それが,以下のリンクにあります.https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.CIR.93.5.1043 この論文のタイトルは, Heart Rate Variability Standards of Measurement, Physio…

【時系列解析】なぜ,自己共分散(自己相関)が急激に減衰しないとパワースペクトルは定義できないのか?

北川 源四郎先生の本「Rによる 時系列モデリング入門」(33 ページ)では, 「ラグが大きくなるとき自己共分散関数が急激に減衰し」という条件が,パワースペクトル の定義を与える部分に書いてあります (以下では,をと書きます).何で? この条件「自己共分…

【時系列解析】長期記憶,長時間相関,フラクタル

時系列の長期記憶 (long memory),長時間相関 (long-range correlation),フラクタル性 (fractality)について整理しておきます. 長期記憶過程 (long memory process) 長期記憶過程は自己共分散関数が, となる確率過程です.何で全部足すの?という疑問がわ…

【確率過程・時系列解析】自己回帰過程の特性方程式の根 (数値解)

前回は,自己回帰過程の特性方程式の話をしました. chaos-kiyono.hatenablog.com つまり,次自己回帰過程 について,特性方程式 の解 (根)の絶対値がすべて1より大きければ,自己回帰過程は発散しない. ということを説明しました.今回は,Rをつかって実際…

【確率過程・時系列解析】自己回帰過程の特性方程式の解と定常性

今回は,自己回帰過程の特性方程式の解と定常性の話です.特性方程式の解が,単位円の内側とか外側とかいう話の説明をします.次自己回帰過程 (以下のは,平均0,分散の白色ノイズです) をラグオペレータを使って書けば, と書けます.これは,以前にパワー…

【心拍変動解析】RR間隔時系列の再サンプリング (等間隔サンプリング化)

心拍変動解析では,パワースペクトルの推定を使った心拍変動指標がよく使われます.HFパワーとか,LFパワーとか呼ばれるやつです.今回は,これら指標について説明しません.心拍変動指標を計算する前に,絶対に理解しておかなければならないことがあるから…

【時系列解析】自己回帰過程のパラメタとパワースペクトルの関係

今回は,一般に次自己回帰過程 のパラメタと,の分散 (平均は0とします)がわかったときに,そのパワースペクトルを導きます.というか,パワースペクトルをとりあえず式で書きます. 今回は,パワースペクトルのパラメトリック推定を理解するための準備にな…

【Rで時系列解析】心拍変動データを読み込み

今回は実際の時系列データを読み込んでグラフを描いでみます. 濃厚接触者として自宅待機中(現在)の私の心拍変動 (RRI間隔)時系列をサンプルとして使ってください.以下のリンクからダウンロードできます. https://drive.google.com/file/d/1i0VIooI1-IKA…

【時系列解析】ランダムウォーク解析の解析的考察(その4:スケーリング指数の関係)

「ランダムウォーク解析」の話の続きです.前回の記事は,これです. chaos-kiyono.hatenablog.com ランダムウォーク解析では,(1) 観測時系列の平均を0にして,(2) 積分して,(3) その増分の2乗平均の平方根をいろんなスケールで計算して,(4) 対のプロッ…

【時系列解析】ランダムウォーク解析の解析的考察(その3:パワースペクトルとの関係)

今回も,ランダムウォーク解析についてです.ランダムウォーク解析 (fluctuation analysisと呼ばれることも)は,Natureに出版された論文でも使われています (以下のリンク). www.nature.com とはいえ,ランダムウォーク解析は,今では実用的な時系列解析法…

【時系列解析】ランダムウォーク解析の解析的考察(その2:自己相関関数との関係)

ランダムウォーク解析について前回に引き続き考えていきます.今回は自己相関(自己共分散)関数との関係です.前回の記事は以下です.chaos-kiyono.hatenablog.com ゆらぎ関数と自己相関(自己共分散)関数との関係 ここでは.平均0,分散の弱定常過程の時…

【時系列解析】ランダムウォーク解析の解析的考察(その1:白色ノイズの場合)

ランダムウォーク解析のつづきです.今回は,この解析法について解析的に考えてみます.chaos-kiyono.hatenablog.com 白色ノイズのランダムウォーク解析 白色ノイズを分析すると 白色ノイズは,無相関な時系列です.平均0,分散の白色ノイズの時系列をランダ…

【Rでフラクタル解析】ランダムウォーク解析,Fluctuation analysis,2次構造関数解析

今回は,ランダムウォーク解析の導入です.detrended fluctuation analysis (DFA)とか,detrending moving average analysis (DMA)とかを使ってる研究者の方が,そこそこいると思います.ランダムウォーク解析は,DFA,DMAの原型となる,素朴な方法です.ラ…

【確率統計】確率変数の和の期待値と分散,積の期待値

ここでは,公式として,2つの確率変数との和,積,分散の性質をまとめおきます.証明は,たくさんの方が与えてくれているのでそれを参照してください.以下の関係は,今後,ランダムウォークの軌道の性質を議論するために使います. 期待値の表現 数学系の…

【フラクタル解析】1次元ランダムウォークの自己アフィン性

時系列のフラクタル解析に分類されるdetrended fluctuation analysis (DFA)とか,detrending moving average analysis (DMA)で何をやっているのかを理解するためには,無相関な時系列を積分すると,その積分時系列がどのような特性を持つようになるのかを理…

【Rでシミュレーション】ブラウン運動のランダムウォークモデル

講義用の参考資料です.今回は,ランダムウォークのサンプルパスを描きます.簡単化のためにx軸上の動きのみを考えます. ランダムウォークのサンプルパス (p = 0.5, q=0.5) ランダムウォークは,ブラウン運動の確率モデルです.物理学におけるブラウン運動…

【時系列解析】ラグオペレータ (lag operator),後退オペレータ (backshift operator)の登場

自己回帰過程や移動平均過程を表現する際に便利な,ラグオペレータ (lag operator),あるいは,後退オペレータ (backshift operator)と呼ばれるものを紹介します.どちらも名前が違うだけで同じものです.ラグオペレータは,後退オペレータはとすることが多…

【音】1/fノイズ(ピンクノイズ)は世界で人気

私の記事で扱いたいテーマの一つに,1/fノイズ(1/fゆらぎ,ピンクノイズ)があります.私は,1/fゆらぎの科学的意義を伝えたいのですが,世の中では「1/fゆらぎには,リラックス作用がある」と認識されていて,根強い人気があるようです. 私のYoutubeチャ…

【時系列解析】時系列の書き方などの慣例

時系列を表すときに,とか,とか,とか,]とか,いろいろな書き方があります.今回は,この書き方の慣例について説明します.絶対のルールがあるわけではありません. 連続時間は ,整数の離散時間は下付 か まずは,連続時間と離散時間の使い分けです.時系…

【時系列解析】2次自己回帰過程のパワースペクトル(解析的導出)

今回から,本格的に2次自己回帰過程のパワースペクトルに入ります.自己回帰過程の理解において,最も重要なポイントの一つは「n次自己回帰過程のパワースペクトルは,1次自己回帰過程と2次自己回帰過程のパワースペクトルの和になっている」ということです…

【ノイズ】音で感じる確率過程

1/fノイズやホワイトノイズを音として体験する動画資料です.視聴する際は音量を低めに設定してください.1/fノイズ(ピンクノイズ)の音です. www.youtube.comホワイトノイズの音です. www.youtube.comホワイトノイズのハイパス信号です.カットオフ周波…

【時系列解析】自己回帰過程のパワースペクトルを解析的に求める

自己回帰過程のパワースペクトルを求めるテクニックの説明です.自己回帰過程の係数が与えられた状況から,パワースペクトルの式を導くことはとても簡単です.でも,大切なことは理屈を感じることです. 必要な基本知識 長さNの時系列のフーリエ変換とその逆…